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第23回 個と組織ドラッカーのマネジメントの視点(5)

前々回(第21回)では、「仕事のマネジメント」と「ヒトのマネジメント」、前回(第22回)では、「セルフマネジメント」を紹介しました。
今回は、組織と社会のかかわりにおいて重要な「事業のマネジメント」について紹介します。

企業の社会的責任をあらわすCSR(corporate social responsibility)という言葉もずいぶん定着してきました。ドラッカーは、この点においてもその本質を指摘しています。人が組織で仕事をするようになったのは、軍隊や修道会を除くならば、産業革命以来のたかだか150~200年前のことです。その中で、企業の社会的責任という問題も「経営者個人の倫理的な行動」から「企業として社会的な問題(の解決)にどう取り組むか」というように変化してきました。

組織(企業)、働く人(個人)、社会の3者の関係についておさらいします。
組織は、
①自らの組織に特有の目的とミッションを果たすことが役割です。

組織は働く人(個人)に対しては、
②仕事を生産的なものとし、働く人に成果をあげさせるという使命を持ちます。

組織は社会に対して、
③自らが社会に与えるインパクトを処理するとともに、社会的貢献を行う責任を持ちます。

上記の3点(自らの組織をして社会に貢献させる3つの役割)について、個別に見ていきます。

マネジメントには、第一に、それぞれの組織に特有の目的とミッション、社会的な機能をはたす役割がある。企業において、それは経済的な成果をあげることである。
*企業と非営利組織(公的サービス機関)の違いはこの経済的な機能の有無です。
企業においては、経済的な成果を生むことができなければ失敗です。顧客が望む製品・サービスを顧客が進んで支払う対価で提供できなければ失敗です。よって、企業のマネジメントたる者(特に経営者、上級マネジャー)は、利益に責任を負うべきことを意味しています。

マネジメントには、仕事を生産的なものとし、人に成果をあげさせる役割がある。
企業にも、企業以外の組織にも、本当の資源は一つしかありません。それが「人」です。
組織が成果をあげるのは、仕事を通じて人という資源を生産的にすることなのです。一人ひとりの人間にとって、生計の資、社会的な地位、コミュニティーの絆を手にし、自己実現を図るためには組織が必要です。そういった組織を実現させる手段がマネジメントです。

マネジメントには、自らの組織が社会に与えるインパクトを処理するとともに、社会の問題解決に貢献する役割がある。いかなる組織も社会の機関であって、社会のために存在する。企業も例外ではない。企業は事業に優れているだけでは、その存在を正当化されない。社会の存在として優れていなければならない。

まさにここが今回の中心テーマです。

今日の組織は、外の世界に貢献するために存在します。外の人たちに何かを供給し、満足してもらうために存在します。(「成果は外にある」)
ドラッカーは、以下の例をあげて説明しています。

・企業は、働く者に仕事を与え、株主に配当を与えるために存在するのではない。消費者に対し財とサービスを供給するために存在する。

・病院は、医師や看護師のための存在ではない。早く退院して、再び入院することのないことを願う患者のために存在する。

・学校は、先生のためでなく生徒のために存在する。

組織は、心理的にも、地理的にも、文化的、社会的にもコミュニティーの一部でなければなりません。したがって企業(組織の中での中心的な存在としての)が自らの仕事を行うには、(=経済的な財やサービスを提供するためには)個々の人間に対し、コミュニティーに対し、社会に対し、何らかのインパクトを与えずに活動はできません。
 
コラム写真01
ドラッカーは、すべての組織は2種類の責任を負うと言っています。
一つ目は、「組織そのものが社会に与える影響から生じる責任」です。二番目が、「社会が抱える矛盾から生じる責任」です。

一つ目は、工場における排煙、排熱、排水、騒音や従業員の車通勤にかかわる排気ガスや近隣の渋滞が考えられます。単独の企業では対処しきれない問題に対しては、新しい事業機会として影響を取り除くイノベーションをもった企業の出現や、業界としての規制を検討していくことが考えられます。

二つ目としてドラッカーは人種差別が企業に与える影響をあげています。しかしもう少し身近な例としては、都市部での人口集中と地方の過疎化、空き家問題、限界集落の問題などもあります。こういった社会問題を事業機会に変えていくことが企業の勤めです。ですから企業の経営層は社会や地域の課題や危機的状況に着目して、その解決を通して利益を上げられるようなイノベーションに取り組まなければならないのです。
イノベーションとは、なにも新しい技術や研究開発によって生まれるものばかリではありません。

組織の社会的責任に関しては、すべての組織が考えていかなければならない課題ですが、その中にあって(営利)企業はその規模や影響力の大きさから重要な役割を負います。適正な利益を生み続けること、それによって雇用を維持するとともに社会的な(負の)影響を減じていく。さらには利益を「未来のコスト」と考え、イノベーションに取り組まなければならないのです。

*イノベーションに関しては、「イノベーションと企業家精神(1985)」 上田惇生訳 ダイヤモンド社 「ドラッカー名著集5(エターナル版)」を参照ください

次回からは、ドラッカーのマネジメントからは少し離れて、「働き方改革」について、今の時点で考えられる対処法について提案をしていきます。

次回「第24回『働き方改革』はじめに」は10月5日掲載の予定です。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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