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32.「働き方改革への取り組み」(5)改善フェーズ

今回は、(D)MAIC の「I」(改善フェーズ)です。
「M」現状把握=仕事の棚卸をして、「A」仕事の目的、構造(前・後工程)などを分析してきました。ここから業務(=仕事)を生産的なものに変えるための改善を行います。

まず、注意点から。このコラムの第21回で「仕事のマネジメント」「人のマネジメント」について触れました。仕事の改善をするときには、まず仕事そのものを正しく設計し直し、組織したうえで、人と仕事を結びつけることです。順番が逆になってはいけません。
「あの人がいるからこの仕事は取っておこう」「手が空く人にはこの仕事を入れておこう」と、人に合わせて仕事をつくっては、生産性は向上しないままです。

改善を進める上で、以下の6つの視点に照らし合わせていくとよいでしょう。
・廃 棄:必要性を踏まえ業務自体をなくす
・標準化:やり方が異なる業務の統一
・集約化:重複実施業務を集約
・整流化:業務の流れを整える
・平準化:労力を均し、ピークを減らす
・外部化:アウトソーシングの検討

前回の「A」(分析・検討フェーズ)での例もこれらの視点を使ったものです。(廃棄、集約化、平準化について触れました)それぞれについてもう少し説明を加えます。

廃棄:不要な業務は廃止し、必要とされる以上に過剰なサービスは簡素化します。
過去の名残で今では使われなくなった資料に時間をかけて作成しているケースや face to face でなくてもいい会議は、ビデオ会議システムを利用し余計な社員の移動をなくするなどです。

標準化:業務処理手順の「ばらつき」を整理することです。
業務が属人化しているならば作業手順をオープンにして(させて)「見える化」することです。
同じアウトプットを出すために、複数のやり方がある場合には最も正確で速くできる方法に統一することです。

集約化:作業のまとまりを考えて複数の担当者ではなく一人が一気通貫で処理することです。
部門間でまとめることでのタイムロスや情報のやり取りの齟齬をなくせます。重複する業務も撲滅できます。

整流化:業務の作業プロセスを明確にして流れをつくります。
必要なデータや機器、時間、スペースなどが準備され、途中で中断したり後戻りしたりすることなく完了できるようにすることです。

平準化:繁忙と閑散、つまり仕事の負荷の山谷をできる限り均していくことです。
月末や月初に、年末や期末に業務負荷が上がることはすでに経験してわかっています。いかにして事前準備をしておくか、いかにして繁忙時に使える資産(マンパワー)を確保するかなどの対策を打つことです。

外部化:企業内の情報を外部に出せるかどうかがポイントですが、外部の専門家にアウトソーシングした方がメリットの出るケースがあります。
すでに税理士や社会保険労務士に業務委託しているところも多いと思います。自社でできること、外部に委託した方がよいことを峻別したうえで、アウトソースをして、コア業務に集中することです。もちろんNDA(機密保持契約)をしっかり結ぶことが必要です。
 
コラム写真01
ここまで、仕事を見直し改善の手を打ったのち、あらためてチームメンバーの仕事の割り当て(分担)の見直しを行います。「仕事のマネジメント」から「人のマネジメント」に進みます。

改善をした結果、従来の分担のままでは個々の業務量(負荷)にばらつきが出てきます。メンバーに新たなスキルを身につけてもらう必要も出てきます。繁忙時にはだれがやっても同じレベルのアウトプットが出せるようトレーニングが必要になります。ここを乗り越えることができれば、チームとしての生産性が上がります。チームリーダーの力量が問われるところです。

変化を嫌っていたメンバーも、改善が進みだすと(あるいは効果が目に見えだすと)動きがよくなってくるでしょう。新しいスキルを身につけることで、より重要な・大きな・成果があがる仕事ができるようになったという実感が、個々の社員の成長につながります。
そして生み出した余力で、新しい仕事への挑戦ができます。また残業や休出で余裕のなかった生活から、それぞれの目標へチャレンジするプライベートな時間が生まれます。
 

Topics : 劣後順位(posteriorities)とは

優先順位(priorities)はよく聞く言葉でしょう。その反対、劣後順位について考えます。
ドラッカーは、仕事をする上で、業務の優先順位を考える前に、まず廃棄を(第31回)その次に劣後順位を考えなさい、と言います。

明日のための生産的な仕事は、それらに使える時間の量を上回って存在する。加えて明日のための機会は、それらに取り組める有能な人の数を上回って存在する。もちろん問題や混乱は十分すぎるほど多い。したがって、どの仕事が重要であり、どの仕事が重要でないのかの決定が必要である。(中略)

実は、本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。優先順位の決定は比較的容易である。集中できる者があまりに少ないのは、劣後順位の決定、すなわち取り組むべきでない仕事の決定とその決定の遵守が至難だからである。

劣後順位第一位を決定することは楽しいことではない。誰かにとってはそれが優先順位第一位であるに違いないからである。優先順位を列挙し、そのすべてに少しずつ手をつけることによって弁解の余地を作っておくほうがはるかに容易である。みんなを満足させられる。もちろんこの方法の唯一の欠陥は、何事もなされないという結果に終わることである。


皆さんは、仕事を進めるにあたってTo-Do List を使っているでしょうか?
その日、その週にやるべきことを書き出して、終わったものからを消していく。例えばその日の朝に10の業務をリストアップし、午前中に4つを終わらせ(消して)午後3時までにもう2つ終わらせた(消した)とします。
次々リストアップした項目が消されていくのは、まさに快感です。達成感が得られます。そこで残っている4つを見たときに、時間をかけて集中しなければならない難題ばかりが残っていて今日中には終わりそうもない、また残業か、といった経験はないでしょうか?
リストアップしたときに、優先順位しかり、ここで劣後順位をきめてから仕事に取り掛からなければならないのです。劣後順位の上位のものは、他人に任せる・依頼するなどすべきでしょう。
その業務に関しては自分より得意な(強みのある)者にやってもらうほうがいいのです。
これに続いて、ドラッカーは、優先順位決定の原則を言っています。

優先順位の決定にはいくつかの重要な原則がある。すべて分析ではなく勇気に関わるものである。
第一に、過去ではなく未来を選ぶ。
第二に、問題でなく機会に焦点を合わせる。
第三に、横並びでなく独自性を持つ。
第四に、無難で容易なものでなく変革をもたらすものを選ぶ。
『経営者の条件』第5章 最も重要なことに集中せよ (First Things First)  P147-151 より引用 


スティーブン・R・コーヴィーの『7つの習慣』で取り上げられた、「時間管理のマトリクス」はよく知られています。緊急度と重要度で2×2のマトリクスを作ります。緊急かつ重要(第Ⅰ領域)の仕事はやらざるを得ませんが、こういった仕事を発生させない管理が必要です。
そのうえで、優先して(集中して)取り組まなければならないのが、緊急ではないが重要(第Ⅱ領域)な仕事です。この点を意識することも重要です。「第3の習慣:最優先事項を優先する」(Put First Things First) を参照してください。

次回「第33回 働き方改革への取り組み(6)」は3月6日掲載の予定です。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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