静岡県の人事・採用・教育・人財育成をサポート!人材紹介やホームページ制作・採用ツール制作、採用アウトソーシングもお任せください。

総合HRコンサルティング会社 SJC 株式会社就職情報センター 

  •  info@sjc-net.co.jp
  •  054-281-5566

46.職場の席替え/フリーアドレス/MBWA

小・中学校では、学期ごとにクラス内で席替えが、学年ごとにクラス編成変えがありました。最近では生徒数が減っている学校では1学年1クラスという所も増えているようです。「席替え」には期待と不安が入り混じっていました。
私の場合は、どちらかというとワクワク感が勝っていました。席替え、クラス替えをすることにより友達の輪が広がりました。

1.職場の席替え

社会人になって、「職場で席替え」と聞くとどのような感想をもつでしょうか?
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2018年11月号に「職場の席替えはなぜ必要なのか」*というタイトルの論文が掲載されていましたので紹介します。
そこからオフィス環境、さらに組織と情報、マネジメントのスタイルについても考えていきたいと思います。
*Idea Watch職場の席替えはなぜ必要なのか『ハーバード・ビジネス・レビュー』編

席替えや配置換えをする理由は、組織内の交流を活性化させる目的ですが、社員にとっては煩わしいと感じるといいます。物理的には席を移動するために持ち物の整理をしてまとめて運ばなければならないし、デスク回りのレイアウトが変われば電話・電子機器の配線も直さなければなりません。配置図(レイアウト図)を作り直し、フロアやオフィスが変われば名刺の作り直しも必要かもしれません。

しかし、それらを上回る効果、実際には売り上げの増加という目に見える変化が出てくるのであれば実施する意味はあります。
一時的なコスト増はありますが、社員間のコミュニケーションの活性化による業務の改善、ムダの排除が期待できます。小さな「働き方改革」のきっかけかもしれませんし、立派なイノベーションです。また、席替え、配置換えをすることで社員各自が自分用として保管していた書類の整理が進むという副次的な効果もばかに出来ません。

この論文には、米国、韓国の2社の実例が紹介されています。米国のピクサー社の例を簡単に紹介します。ピクサー社といえば、アップル社を追われたスティーブ・ジョブズが活躍した会社です。(その後、ジョブズはアップル社に返り咲きをするのですが)
デザイン会社は、人の流れがスムーズで、他部門の同僚たちとの思いがけない出会いがあれば、コミュニケーションが向上し、共同作業がうまくなり、創造性を増すと考えられます。
新社屋の計画にあたりジョブズは、オフィススペースの中央の空間にトイレを作りました。そこまでいろいろなセクションの社員との「接触」をしながら歩いていかないと利用できないようにしたのです。
オフィス改造のへの経済的効果を証明するのは困難ですが、イノベーションが活発になることによる効果については明確です。  

2.フリーアドレス

フリーアドレスとは、オフィスに社員の固定席を作らずに自由な席で仕事を行える仕組みのことです。机を固定しないことにより、コスト削減やコミュニケーションの活性化、セキュリティの向上が期待できます。

営業部門などの日中は主に社外で仕事をして夕方からデスクワークをするような働き方の部署や、出張者が多く日中の空席率の多い職場では、フリーアドレスを導入しているところが多いようです。
2018年10月下旬の新聞に、県のある部局の「働き方改革へ 環境一新『フリーアドレス』採用」という紹介記事が載りました。

その中で以下の4点に注目しました。
①役所での取り組みであること
②主に終日事務作業が中心の職場であること
③来客対応のカウンターを設けたこと
④PCのサブディスプレーを設けたこと


①の役所での取り組みはあまり前例がないらしいので(記事にもなったのでしょう)業務の効率化の検証をし、他部署への展開を検討して行政の効率化を目指してほしいと思います。また検証結果を公開してほしいものです。

②の終日事務作業をするメンバーが多い場合の仕組みの運用の工夫を見てみたいと思います。フリーアドレス設計のオフィス環境であっても、人間の持つ習慣性で次第に席が固定化されていくと投資効果が生まれません。

③の来客カウンターがあるということは、来庁した県民にも職場での仕事ぶりを公開するわけです。県民の方も、固定デスクについて黙々と仕事をするばかりが良いのではなく、職員同士での連携業務やあちこちでの小ミーティングをしながら効率化をはかろうとする試みを注視しつつ、業務改善を目指す試みを応援したいものです。

④のPCサブディスプレーに関しては、フリーアドレス席でのノートPCとの併用を考えておられるのか不明ですが、安易なマルチタスク信仰に左右されないように集中して、その時点で取り組むべき業務への集中を図ってもらいたいものです。
ともするとサブディスプレーがメール受信通知専用になり、進行中の業務の頻繁な中断、後戻り、ミスの発生につながりかねません。

チェック

そのほか、記事では電子決済の導入やペーパーレス化も紹介されています。ペーパーレス化は、電子機器の導入、業務のシステム化で実現できるといわれていましたが、結局変わらなかったか、かえって増加したという過去の経験があります。
電子決済、電子データとしての保存などは仕組み化して徹底させること、個人が(個人控えとして)貯め込む紙媒体の資料は強制力を持ってでも廃止か共有化を進めなければ削減できないでしょう。

私はまだこの部局を訪ねる機会がありませんが、経過を見てみたいですし、庁内での検証や成果報告があればぜひ公開してもらいたい、この取り組みを応援したいと思います。そしてそこから一般企業も学ぶことがあるでしょう。

席替え・配置換えやフリーアドレス導入には、まず、お金がかかります。簡単に着手するわけにもいきません。そこで、今すぐにでも始められる手段をご紹介します。特に、経営者やマネジャーに垂範していただきたいことです。

3.MBWA

(Management by Walking About あるいは Management by Wandering Around)

少し古い話になりますが、1980年代に世界的なベストセラーになったビジネス書『エクセレント・カンパニー』がありました。
コンサルティングファーム・マッキンゼーの同僚であるトーマス・J・ピーターズと、ロバート・H・ウォータマン・Jrの共著です。それを、当時マッキンゼーの日本支社長であった大前研一が翻訳しました。
そこで「組織の流動性」として紹介されたMBWAという手法です。

経営をオフィスに閉じ込めない。ということも形式ばらないコミュニケーションに役立っているのであろう。ユナイテッド航空のエド・カールソンは、これを「目に見えるマネジメント」とか「MBWA(Management By Walking About--歩き回る経営)」と呼んでいる。
ヒュ-レット・パッカードでは、同じく「MBWA(Management By Wandering Around)である。

※wander:歩き回る、ぶらつく 形式ばらないコミュニケ―ションをもう一つ刺激しているのは、物理的施設、配置にこらされている数々の工夫である。

コーニングでは、新しいビルにエレベーターの代わりにエスカレーターを設置して、人と人がすれ違いざま顔を合わせる機会を多くした。スリーエムでは、10人ほどの人が集まれば、どんな社内活動でも助成金を出すことにしている。昼食のときなり他の機会に、趣味の会合でもなんでも、大勢が集まれば、問題解決の話もする機会が増える、それだけでもペイする、というのである。
Chap.5 行動の重視(P213-214)


要するに、経営者やマネジャーが自室/自席に居続けて部下からの報告を聞くのではなく、自ら現場に出よ。現場に行って(指示・指摘・指導するのではなく)まず話を聞け。ということです。
情報は現場が持っています。自らの目と耳で情報に触れることです。口は最後です。「Listen first,speak last. 聞け、話すな」です。

もう一つ、『エクセレント・カンパニー』の著者の一人、トム・ピーターズのコラム集“The little BIG Things”から。
Get the hell out of the cube! Unplug the terminal!
Put your iPhone/BlackBerry in the drawer!
Chat up anybody whose path you cross…especially if they are not among your normal Chatees.
Go strolling in parts of the organization (your neighborhood? your city?) where you normally don’t stroll.
Slow down.
Stop.
Chat.

I am an MBWA zealot.
I SWEAR BY MBWA.
In any and all circumstances.
Join me?
(P-l-e-a-s-e.)
87. Managing By Wandering around—It’s All Around you! (p255-257)


(訳:大庭純一)
キュービクル(部屋)から外に出よう!
PCの電源をoffに!iPhone, BlackBerryを引き出しに放り込んで!
あなたが歩いていくときに出会うみんなと…特に普段話をしない人と。
社内を(ご近所を、街を)散策しよう。あなたが普段いかない所へ。
ゆっくりと、
立ち止まって、
話をしよう。

私はMBWAの熱狂者、
MBWAを大いに信頼している。
どんな時でも、すべての場所で、
私と一緒にやりませんか?

原書“The Little Gig Things”は翻訳されて出版されています。
『エクセレントな仕事人になれ!』「創造力」を発揮する自分づくりのためのヒント163 杉浦茂樹:訳(阪急コミュニケーションズ 2011.9.29)

蛇足ですが、このMBWAを勧める背景には、オフィス内から経営全体をコントロールしよう/できると考えているMBA(経営学修士:Master of Business Administration)主導主義への牽制があります。

ドラッカーも、この『エクセレント・カンパニー(In Search of Excellent)』とトム・ピーターズを高く評価していました。そのうえで、1990年に、ウォールストリートジャーナルに投稿した文章で以下のように書いています。

私がトップ経営者たちに対し、「歩き回る」こと、すなわち自分の部屋から出て、社内の部下のところへ行って話をすることの重要性について助言をしてから、早40年に近い。

当時、それは正しい助言だった。しかし今では、間違った助言となってしまい、経営者にとって最も重要な資源、すなわち彼らの時間の浪費を招くもとのようになっている。なぜなら今日では、上方への情報の伝達を組織に組み込むための方法は、他にすでに明らかになっているからである。
むしろ中を歩き回ることに頼るならば、経営者は間違った安心感に陥らされてしまう。自分に知らされたことは、部下が(経営者の)耳に入れようとしたものであるにすぎないにもかかわらず、すべての情報を手にしていると信じてしまう。
したがって今では、経営者に対する正しい助言は、外を歩き回れということになる。
下線、括弧内 筆者が追加 『未来企業』Chap.25 p228-229


ここでドラッカーが強調していることは、経営者は組織の外部の「顧客の動向」や「経営環境の変化」により注力しなければならず、社内を歩き回るだけでは十分ではないことです。言い方を変えれば、外部の変化をキャッチする責任は経営者にあるということです。

社内の情報が存在する場所、すなわち現場へ行くのはマネジャー。マネジャーは現場に行ってまず「見る」そして「尋ねる(質問する)」ことをしなければならない。現場の社員が話したいと思っていることだけを聞く、自身が言いたいことだけを言う、のでは現場を正しく知ることはできない。ということです。

組織内の情報の流れは、情報システムの技術をつかってシステム化しなければならない。これまでの多段階の階層組織において、階層の多くは何も経営管理してこなかった。なにも意思決定せず、上へ下へと信号を送るための増幅器(amplifier)であった、
ということです。

組織をよりフラットにして社内の情報の共有、意思決定の迅速化に取り組む企業が増えてきています。このテーマについては、またあらためてお伝えしようと思います。

本
『エクセレント・カンパニー』T.J.ピーターズ・R.H.ウォータマン 訳 大前研一
講談社1983.07 後に文庫(講談社文庫)として再発売されたが現在入手困難です。英治出版より「復刻版」2003.07が出ています。
”THE LITTLE BIG THINGS 163 WAYS TO PURSUE EXCELLENCE”2012.01トム・ピーターズによる163本のコラム集。#87にMBWAが取り上げられています。

Topics :ファインダーズ・キーパーズ

スティーヴン・キング(アメリカのモダンホラー/ミステリー小説家)のファンは多いかと思われます。小説を読まなくても多くの作品が映画化されていますので見た方もおられるでしょう。
そのキングの最新三部作:退職刑事ホッジスシリーズの第2作が『ファインダーズ・キーパーズ』邦訳2017.09です。(第1部『ミスター・メルセデス』2016.08、第3部『エンド・オブ・ウォッチ(任務の終わり)2018.09』)

2020年のオリンピック誘致で、東京チームの一員として滝川クリステル氏が「お・も・て・な・し」の話をしたことは有名ですが、そのスピーチの中で「日本では、落し物をしても持ち主に返ってくる。もしそれが現金であったとしても」といっていました。

前置きが長くなりました。”Finders keepers, Losers weepers”という慣用句があります。「落し物は拾い得」「拾ったものは自分のものにすることができるが、なくしたら泣きを見る」といったように使われます。当然ながら法律的にはあるいは道徳的には、許されるものではありませんが。 ビジネスに関して言えば、「自分の持ち物には自分が責任をもつ」という戒めですね。

師走のあわただしい季節です。会社の情報は持ち出さないが原則。持ち出さなければ落とすこともありません。そうすれば自分のケイタイとお金をしっかり管理できます。今年1年を締めくくり、元号に代わる新しい年を迎えましょう。猪突猛進する前に、ちょっと身の回りの確認を。
どうぞ良い年を!
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

※無断転載は禁止します


PAGE TOP