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48.プロフェッショナル・マネジャーの行動原理(成果をあげるには)

今月は、先月に引き続きドラッカーの論文「プロフェッショナル・マネジャーの行動原理」後半の4つ(+1)の行動原理について書いていきます。
前半4つの行動原理についてはこちらをご覧ください。
第47回 プロフェッショナル・マネジャーの行動原理(1)~(4)

「プロフェッショナル・マネジャーの行動原理」“What Makes an Effective Executive”
初出 Harvard Business Review June 2004
邦訳: ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー(DHBR) 2004.8
再掲『ドラッカー経営論』『経営者の条件(序章)』『リーダーシップの教科書』
いずれもダイヤモンド社
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(5)コミュニケーションに責任を負う
・有能なマネジャーは、自分が立てたアクションプランや必要としている情報に対して周知徹底を図る。
⇒自分の計画を上司や部下、同僚を含め、一緒に働く人たち全員に説明し、意見を求める。
⇒仕事をやり遂げるために入手しなければならない情報に関して、各人に理解してもらうように努める。
・部下から上司への情報の流れには誰もが注意を払う。しかし、同僚や上司から得られる情報の必要性についても等しく注意を向ける。(上から、斜め上から、横からの情報に注意を払う)
・組織を一つに束ねているのは、権限や命令でなく情報である。情報とは、経理などの情報スペシャリストが扱えばよいのではない。必要な情報を明らかにし、求め続けること。

(6)チャンスに焦点を当てる
・有能なマネジャーは、問題ではなくチャンスに焦点を当てる。
⇒問題に対応することは必要。うやむやにしてはいけない。しかし、問題の決着は成果を生むことはない。ダメージを防ぐだけ。
⇒チャンスを利用してこそ成果が生まれる。
・変化を脅威ではなくチャンスと見る。組織の内と外に変化を見つけ、チャンスとして使えるかどうかを考えなければならない。特に次の7つの状況を精査しなければならない。

【イノベーション7つの機会】
*詳細は、のちに出版された『イノベーションと企業家精神』第2章を参照してください。
ここでは項目のみ紹介します。
自社や競合他社、あるいは業界内における予期せぬ成功や失敗
現在の生産方式、商品やサービス、市場とそれらの可能性の間にあるギャップ
自社や業界内外を問わず、生産方式、商品やサービスにおけるイノベーション
産業構造や市場規模における変化
人口統計
考え方や価値観、認識、社会トレンド、意義などの変化
新たな知識や技術
・チャンスに焦点を合わせるには人事が重要。問題にではなくチャンスに最高の人材を投入する

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(7)会議を生産的に進行する
・マネジャーは、会議の生産性を高めなければならない。
・生産性を高めるためには、
⇒相応の自制が必要。
⇒どのタイプの会議が適切かを決めなければならない。
⇒決めたならば、そのやり方を貫かなければならない。
⇒目的が達成され次第、会議を解散する。
⇒十分なフォローアップを行う。

※会議の生産性に関しては、また新たにテーマ設定してお伝えします。特に、ビデオ会議などIT技術の積極利用についても盛り込む予定です。

(8)「私」ではなく「我々」の立場で考え発言する
・有能なマネジャーは、最終責任は自分が負うことをわきまえている。誰とも分担できない、誰にも移譲できない。
・マネジャーが権威をもちうるのは、自らのニーズと機会ではなく、組織のニーズと機会を考えなければならないから。
・簡単ではない。しかし厳格に守らなければならない。

ドラッカーは、8つの行動原理(習慣化すべきもの)について述べたあと、もう一つおまけ(one final, bonus practice)として、あまりに重要で、原則に格上げしたいことを紹介しています。
(+1)聞け、話すな、である。(「まず耳を傾けよ、口を開くのは最後である」原文では:Listen first, speak last.)

最後に、論文の結論部分をそのまま引用します。
「有能なマネジャーは、その人格、強みや弱み、価値観、信念において実に千差万別である。その唯一の共通点は、正しいことをやり遂げている(get the right things done)ということである。生まれつき有能な人もいる。しかし、求められていることはあまりに大きく、並外れた才能だけで満たすことは無理である。
有能さは修練の賜物である。そして、いかなる修練もそうであるように、有能さは学習できるものであり、必ず身につけなければならないものなのだ。(Effectiveness is a discipline. And, like every discipline, effectiveness can be learned and must be earned.)」


以上が、2004年に発表された論文「プロフェッショナル・マネジャーの行動原理」の紹介です。ドラッカーのなくなる1年前(94歳)のときのものです。ベースとなっているのは1967年の著作『経営者の条件』です。

ドラッカー教授の、厳しい指摘の中にも、平凡な私たちに勇気を与え、背中をそっと押してくれる暖かさも感じていただけたでしょうか。一つでも二つでも、心に響いた言葉を心に刻んで、実践していきましょう。

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(左)『リーダーシップの教科書』2018.8 HBR(ハーバードビジネシレビュー)に掲載された論文の中からリーダーシップ論に関する影響力のあるもの10本を掲載。ドラッカーの当該論文以外に、ジョン・P ・コッター、ロナルド・A・ハイフェッツ、ウォレン・G・ベニス、ジム・コリンズ、ダニエル・ゴールマンの論文を収録してある。
(中)『経営者の条件』(ドラッカー名著集1)序章に「成果をあげるには」という題名で掲載。
(左)DHBR(ダイヤモンドハーバードビジネシレビュー)2004.8号の抄訳(非売品)
 

Topics:100年前の求人広告

ある有名な求人広告です。すでにどこかで聞いたことがある方もいらっしゃるでしょうが…
さてどんな人に対する求人でしょうか?

「男子求む。至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の長い月日。たえざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と称賛を得る」
(原文は)MAN WANTED for Hazardous Journey. Small wages, bitter cold, long month of complete darkness, contact danger, safe return doubtful. Honor and recognition in case of success.

今の法律では、「男子に限った」求人はご法度です!僅かばかりの報酬で危険がいっぱい。3Kどころじゃない!と突っ込みたくなる方もいらっしゃるでしょうが…
この求人広告は、1914年英国人探検家アーネスト・シャックルトンが、南極大陸横断に挑戦する際に、隊員募集のため新聞の片隅に載せたものです。このときすでに英国人スコット*やノルウェー人アムンゼン*らによって南極点への到達は達成されていたのですが、彼は大陸横断に挑戦しようと試みたわけです。
*スコット隊、アムンゼン隊は南極大陸上陸地点から南極点を目指し、また最初の地点に戻るルートでした。スコット隊は、アムンゼン隊よりも一歩先に南極点に到達したにもかかわらず、復路で遭難し生還することができませんでした。

シャックルトン隊の船(エンデュランス号)は、上陸予定地点に到達することができないまま南極海に閉じ込められてしまいます。船は氷に挟まれ破壊され沈没してしまいます。彼らは氷の海に取り残されてしまいます。寒さ、食糧不足、疲労そして病気…絶え間なく押し寄せるさまざまな危機。救援も期待できない状況で、史上最悪といわれた漂流は17か月にも及びました。しかし隊員28名全員は奇跡的に生還を果たすのです。

探検としては、所期の目的を達成できませんでしたが、全員を無事帰還させたシャックルトンのリーダーシップはビジネスピープルとして学ぶ点が多くあります。危機的状況下でのリーダシップの例として、イギリスの首相のW.チャーチルなどとともに取り上げられることも多いようです。また、冒頭で紹介した求人広告は、マーケティングのテキストにも引用されていました。

イギリスBBC作成のドキュメンタリードラマをNHKが放映しましたのでご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。生還した隊員の何人かが書いた漂流記も数種類出版されています。ノンフィクションのドキュメンタリーとしても十分楽しめます。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

※無断転載は禁止します


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