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49.心理的安全性/Googleのプロジェクトとエドモンドソンの論文

この人事担当者向けコラム第44回、45回では「失敗を許容/推奨する組織」がテーマでした。社内の会話や会議で、よく分からないことがあったら「わかりません、教えてください」と言える組織にならなければならないということを書きました。

今回の「心理的安全性」もそれと共通するものです。最近、「心理的安全性」という言葉をあちこちで見かけるようになりました。そこで、Google社での実例とハーバード・ビジネススクール教授で行動科学の研究者エイミー・エドモンドソン(Amy C. Edmondson)の考察を取り上げます。

Google社は、その技術力のみでなく、「フォーチュン」誌の調査によるアメリカで最高の職場の一つとして毎年リストの上位にランクインしています。最高の(能力の)人材を集め、快適な職場環境で最高のパフォーマンスを引き出すべく挑戦しているのです。
人事資源管理部門の一部であるピープル・アナリティクス部の仕事は、職場の人間関係、過労感、報酬に対する満足感、ライフワークバランス、健康、知的刺激を受けられる環境であるかなど多岐にわたる項目を調査しているそうです。ここから社内の福利厚生政策や採用方針、昇級昇格基準などの提言をおこなっています。

過去のプロジェクト(プロジェクト・オキシジェンというネーミング)では、「良いマネジメントとそうではないマネジメントの違いを明らかにし、マネジメントの向上には何が必要かを明らかにする」というテーマでした。ここから得られた知見は、

よい管理職とは
1.優れたコーチである
2.部下に権限割り当て、細かいことに口出しをしないこと
3.部下の成功と幸福を気にかけていることを態度で示すこと
4.結果志向であること
5.情報に耳を傾け、共有すること
6.部下のキャリア構築に協力すること
7.明確なビジョンと戦略を持っていること
8.重要な専門スキルを身につけていること
が分かったそうです。

このプロジェクトが有益な結果をもたらし、高評価であったことから、新たに大規模なプロジェクトを計画しました。それがプロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)、リーダーはアビア・ダビー(Abeer Dubey)です。

プロジェクト・オキシジェンでは、上司と部下の関係から「指導力」に焦点を当てたが、「チームがどのように機能しているのか」「どういったメンバーの組み合わせが最適か」といった点が検討されていなかった。
「上司は素晴らしいのに、チームの息があっていない」「たいしたことのない上司だが、団結力のあるチームが結果を出す」ということがなぜ起きるのか。完璧な(生産性の高い)チームをつくるにはどうしたらいいのか。これらを解明しようとしたのです。

プロジェクトチームは、社員へのインタビュー、学術文献の読み込みを実施しました。インタビューからは、性差・性格・職歴・スキルなどデータを収集しました。行動を観察し、計測・集計・分析しました。
しかしそれらからは「成果をあげる」ことにつながる特徴的な要因は見つかりませんでした。一方、学術文献からは、「集団的規範」と呼ばれるものに焦点をあてました。
「どのようなグループでも、時間が経つうちに、適切な行動に対する集団的規範が作られる」というものです。論争をよりも不和を避ける方が大切だというチームも、意見の対立を奨励して集団思考(集団的浅慮)を排除することに価値を置くチームも「成果をあげる」ことができ、「失敗すること」もあるのです。成果をあげることができるチームでは、メンバー個人としてはそれぞれの規範に対しての好みがあったとしても、チーム内ではチームへの貢献意識からそのチームのもつ規範を優先する行動が見られたというのです。

ここから、個人の資質における特性の分析ではなく、個人の行動に焦点を当てた分析が必要だということに気づいたのです。  

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エイミー・エドモンドソン(http://www.dhbr.net/articles/-/1750を参照ください)は、ハーバード大学大学院で行動科学の研究者としてキャリアをスタートしました。医療現場でのチームワークの研究を調べる中から「心理的安全」という知見を導き出しました。
そのきっかけが、「手術においてはチームワーク意識(結束力)の一番高いチームが一番ミスをしないだろう」という明白とも思える仮説が否定される結果であったことです。
なぜそのような想定外の結果がでたのか?

答えは、「結束力の強いチームが多くのミスをするというのではなく、こういったチームのメンバーはミスを隠さずに報告するからだ」ということが分かったのです。
ミスをしたときに罰せられるか否かが、ミスをした後で正直になれるかどうかを決定するのです。このことから言えるのは、ミスの顕在化から学習することにより、致命的なミスの発生防止につながっていくのです。
(航空機の運航についても、「ミスの報告を処罰しない」という原則の徹底によりトラブルの再発防止、安全性の向上に大きく寄与しているといわれます。詳しくは『失敗の科学』マシュー・サイド著を参照ください)

ある程度のミスはどうしても起きる、そのミスを生産的に処理するためには「処罰しない環境づくり」が何よりも重要なのだ、ということです。ここから、ビジネスの現場においても、チームの生産性を向上させるものとして「心理的安全」が必要だといいます。
「心理的安全とは、意見を述べても気まずくならない、拒否されない、罰せられないという安心感である。それはメンバーがありのままの自分でいられるような、相互信頼と相互尊重に特徴づけられるチームの雰囲気である」としています。

Google社のプロジェクトチームは、この内容のエドモンドソンの論文を見つけ、これこそがチームにとって重要なことを示していると判断しました。誰かが失敗しても後々まで影響が残らないように努力する、突飛な意見を尊重する、他人の選択について遠慮なく質問すること。だれも自分の足を引っ張ろうとはしていないという安心感です。「みんなが心を開くことが大事」ということは誰でもわかっているのです。そこから一歩踏み込んで、どういった行動が大切か?どういった行動を促すか・抑制すべきか?までを考えて、個々人がチーム内で行動できれば、成果につながるのです。

エドモンドソンの著書『チームが機能するとはどういうことか』英治出版2014より
“TEAMNG How Organizations Learn, Innovate, and Compete in the Knowledge Economy” 2012
職場での心理的安全性によってもたらされる7つの明確なメリット
・率直に話すことが推奨される
・考え方が明晰になる
・意義ある対立が後押しされる
・失敗が緩和される
・イノベーションが促される
・成功という目標を追求する上での障害が取り除かれる
・責任が向上する

心理的安全性を高めるためのリーダーの行動
・直接話の出来る、親しみやすい人になる
・現在持っている知識の限界を認める
・自分もよく間違うことを積極的に示す
・参加を促す
・失敗は学習する機会であることを強調する
・具体的な言葉を使う
・境界を設ける*
・境界を越えたことについてメンバーに責任を負わせる
*逆説的になるが、リーダーがどんな行為が非難に値するかをできるかぎり明確にすると、メンバーは好ましい行動の境界をあてずっぽうにしている場合より心理的安全を感じることができる。

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Topics:ビジネス書の選び方 私の注目著者 Mr.Grzywacz

大型書店のビジネス書のコーナーを訪れると、そのたびに新刊の多さに圧倒されてしまいます。活字離れ・紙媒体の衰退が言われていますが、ビジネス書に関してはまだまだ「学びたい」「学ばなければならない」読者のニーズがあるようです。

しかし、自分に合った本を見つけるのは難しいものです。あるテーマについて「10冊くらいまとめ買いをして読んでいけば、その分野については一通りの理解ができる」などと言われますが、それだけの時間に加え、金銭的な負担もバカに出来ません。

私がやっている選び方のポイントを紹介します。
著者に注目しています。大きく分類して、
①学者・研究者が書いたもの
②経営者が経験を語ったもの
③コンサルタントが書いたもの
④実務者が書いたもの
⑤編集者・目利きがまとめたもの
です。

ご自身のニーズを踏まえて、まえがき・目次を見て、著者紹介を読んでから選べば、ハズレを引く可能性を減らすことができます。
悩ましいのは⑤です。幅広い分野や難しい内容をうまくまとめて解説してくれるのが名編集者であり、ビジネス書の目利きと言われる人たちです。
しかしながら中には、あちこちの本からつまみ食いして寄せ集めた本も一定数含まれています。優れた目利きとしては(日本人ではちょっと思いつかないのですが)アメリカ人のマルコム・グラッドウェル氏、ダニエル・ピンク氏は有名です。

もう一つの方法として、出版社からの推測がある程度できます。ダイヤモンド社や東洋経済新報社、日本経済新聞社、日経BP社などの本は、著者も一流で、内容がしっかりしています。
最近、私の注目している出版社は、英治出版です。昨年『ティール組織』を発売したところです。そのほか『学習する組織』『U理論』などまさに企業人事担当者向けの良書がたくさんあります。社名はあげませんが、入門書や図解、若手の著者の作品を積極的に取り上げる出版社など、それぞれに強みがあります。ある程度の数を読んでいくと、ご自身の好みの出版社が出来てきます。

ここで、私がお勧めしたい新進気鋭の著者がいます。名前は、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(Piotr Feliks Grzywacz)です。一度聞いたら忘れられない名前です。

著者略歴には、ポーランド生まれとあります。ドイツ、オランダ、アメリカでの生活経験、2000年に来日しベルリッツ、モルガン・スタンレー、グーグルでの就労経験があります。先ほどの分類でいえば④の実務家です。ヨーロッパ、アメリカ、日本での生活と個人プレーヤー中心の証券業界、最先端のIT企業、教育機関など幅広い経験から、先進企業の働き方、仕事の仕組みづくり、人事政策など示唆に富んだ内容にあふれてます。

次々と著書を出版していっているので、一部、内容が重複しているところもありますが、タイトルから興味のあるものを選んで読んでいくといいでしょう。
『0秒リーダーシップ:「これからの世界」で圧倒的な成果を上げる仕事術』2016/7/22
『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか グーグルの個人・チームで成果を上げる方法』2017/1/28
『ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち』2018/2/23
『Google流 疲れない働き方』2018/3/10
『グーグル、モルガン・スタンレーで学んだ 日本人の知らない会議の鉄則』2018/5/10
『人生が変わるメンタルタフネス--グーグル流「超集中」で常識を超えるパフォーマンスを生み出す方法』2018/7/31
『働き方改革による「自己実現」元グーグル人事担当が世界企業トップと語った“本当にやるべきこと”』2018/8/31
『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』2018/8/20
『リラックスイングリッシュ』2018/11/26
『ゼロから“イチ"を生み出せる! がんばらない働き方』2019/1/10

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私自身も、今のところ3冊を読み終えたところですが、これからも興味のあるテーマから追いかけていこうと思っています。いきなり先進企業の取り組みを自社に移植することはできませんが、いいとこ取りをして少しずつまねていくことができればいいのではないでしょうか。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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