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58.教育化とは(リアルビジネス3.0 あらゆる企業は教育化する)

年末年始の休暇の折に読んでいただけることを念頭に、ビジネスの大きな流れの中で、最近目にした「教育化」なる考え方についてふれてみます。
また、Topicsでは、ドラッカーがよく訊ねていた質問「あなたは、何によって憶えられたいですか?」を取り上げます。こちらも、ゆっくり時間の取れるときに考えてみてください。

ドラッカーの有名な言葉に「顧客の創造」があります。まずこの言葉の出典を示します。文脈からその意味を押さえておきましょう。

「企業の目的」
企業とは何かを理解するためには、企業の目的から考えなければならない。企業の目的は、それぞれの企業の外にある。事実、企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的として有効な定義は一つしかない。すなわち顧客の創造である。
(中略)
企業とは何かを決定するのは顧客である。財やサービスへの支払いを行うことによって、経済的な資源を富に変え、ものを商品に変えるのは顧客だけである。企業がみずから生み出していると考えるものが重要なのではない。特に企業の将来や成功にとって重要ではない。
顧客が買っていると考えているもの、価値と考えるものが重要である。企業が何であり何を生み出すかを規定し、企業が成功するか否かを決めるのは、それらのものである。


そして、このあとに、さらに有名な言葉が続きます。

「起業家的な二つの機能」
企業の目的が顧客の創造であることから、企業には二つの基本的な機能が存在する。すなわち、マーケティングとイノベーションである。

『現代の経営(上)』p46-47

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【顧客に聞く】
顧客の創造のためには、顧客の真のニーズを見つけ出さなければなりません。また、現時点の顧客に対してはなぜその製品・サービスに対価を払い続けるのかを聞かなくてはなりません。

【非顧客に聞く】
顧客であってほしい、でも現時点では非顧客に対してはなぜ他社の製品・サービスを選んでいるのかを調査しなければなりません。そしてマーケットの大多数をしめる消費者のニーズが今後どのように変化していくのかを探らなければなりません。

その中で、「顧客を教育化する」というワードを耳にした率直な感想が「えっ、どういうこと?」でした。
月刊誌「日経トップリーダー」連載の記事をまとめた書籍『リアルビジネス3.0 あらゆる企業は教育化する』をベースにみていきます。

企業は、製品をただ作ったり売ったりするだけでなく、顧客が買った後も関係を維持し、継続的に収益が上がるような仕組みづくりに進化してきました。これが事業のサービス化です。
このサービス化がさらに進んで起きている新しい動きを「教育化」としています。
本書では、
・単にモノを売っていた関係を1.0
・サービスを強化した関係を2.0
・人間の心的領域へ価値を提供するリアル(本当)ビジネスを3.0
で表しています。

「カスタマーサクセス」、日本語に訳すと「顧客の成功」という言葉があります。単に顧客にモノを売るのではなく、顧客の成功を導くことがビジネスの肝、という考え方です。

この考えの元は、定額料金を支払って商品やサービスを利用するサブスクリプション型ビジネスの世界から出てきているといいます。
顧客の成功を丁寧に後押しすることで顧客の離脱を防ぎ、LTV(顧客生涯価値:顧客が生涯にわたってその企業に払う金額)を高められる、としています。実例として、BtoB,BtoCにわけて、それぞれ数社の企業の取り組みが紹介されています。

BtoCの企業の実例から一つ紹介します。
ある地方都市(県庁所在地)にある不動産会社です。近隣の県からこの地域の中核大学へ進学してくる学生にアパートを紹介しています。この会社が、無料バス、廉価カフェで学生をサポートすることで成功しているのです。無料バスは学生の住んでいるアパートの集中している地区から大学までのシャトル便、カフェは朝食の自炊をさぼりがちな学生への健康配慮です。学生個人からすると在学中の4年(6年)間の期間ですが、口コミの力で当社を指名してくれる学生が毎年継続して増えていることで大学や地域にも価値を提供できています。

さて、この「教育化」という言葉が定着するか?
私はちょっと「上から目線」のイメージがあって違和感があります。「顧客との共有価値の創造」くらいがいいかとも思いますが、ちょっと長いですね。ネーミングはどうであれ、この考え方、流れをいち早く取り込んだ企業が他社を大きくリードすることは間違いありません。

ビジネス月刊誌の連載を書籍化したものですので、写真やイラスト、インタビューやコラムも充実しています。十数社の実例もあり、自社で取り組めそうなアイデアが見つかるはずです。ぜひ年末年始の休暇時にお読みください。

『リアルビジネス3.0 あらゆる企業は教育化する』
日経トップリーダー編,日経BP社,2019.11.18発行
本体1,500円+税
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Topics:ドラッカー:何をもって憶えられたいか?

「何をもって憶えられたいか?」について、ドラッカー自身はどのように答えたのかをご紹介します。
では、ドラッカー自身は、「何をもって憶えられたいか」の問いにどう答えたのでしょうか?まずドラッカーが13歳の時の話からです。

宗教の先生が「何によって憶えられたいかね」と聞いた。誰も答えられなかった。すると、「答えられると思って聞いたわけではない。でも50になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよ」といった。
長い年月が経って、私たちは60年ぶりの同窓会を開いた。ほとんどが健在だった。あまりに久しぶりだったため、初めのうちは会話もぎこちなかった。すると一人が、「フリーグラー牧師の問いのことを憶えているか」といった。みな憶えていた。ある者は40代になるまで意味がわからなかったが、その後、この問いのおかげで人生が変わったといった。25ぐらいになってから考え始めたという者も何人かいた。
(中略)
今日でも私は、いつもこの問い、「何によって憶えられたいか」を自らに問いかけている。
これは、自己刷新を促す問いである。自分自身を若干違う人間として、しかしなりうる人間して見るよう仕向けてくれる問いである。運のよい人は、フリーグラー牧師のような導き手に、若い頃そう問いかけられ、一生を通じて自ら問いかけ続けていくことになる。

P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』p219-220

では、ドラッカー自身の答えとは、(E.H.イーダスハイムのインタビューより)
わたしたちの最後のインタビューのどこかで、ドラッカーは、ある一つのことをもって憶えられたいといった。
「なすべきことをなさしめさせたものとして憶えられたい」
「ほとんどの人が私のものとしている目標管理その他マネジメントの手法のことは、たいして重要ではない。私の貢献は、仕事、機能、責任としてのマネジメントを明らかにしたことにあると思う」
「かつてマネジメントは部下をもつことだった。したがって私の貢献は、マネジメントとは成果をあげることであると明らかにしたことにある。部下をもつことと成果をあげることは違う。しかし、このことは十分に理解されていない。その結果、ほとんどの組織が問題に人を貼りつけ、機会を放ったままにしている」

『P.F.ドラッカー理想企業を求めて』E.H.イーダスハイムp222-223

ちょっと想像してみましょう。あなたの葬式(告別式)の場面です。親戚や親しかった友人たちが集まってくれています。彼ら・彼女らはどのような会話をしているでしょうか?空間に留まって会葬者を上から眺めているあなたの魂は、微笑んでいるでしょうか?

大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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