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59.リーダーによる倫理の逸脱 頻発する企業不祥事

2020年を迎え、はや一か月が過ぎようとしています。今年は、オリンピック・パラリンピックの年で競技観戦も楽しみですが、期間中のビジネスへの影響の調査と対策はしておかなければなりません。

今回のテーマは、なぜ日本を代表するような大企業・名門企業で不祥事が起きるのか?また同じような不祥事が繰り返されるのか?大企業に限ったことばかりでなく、大きく報道されないものの身の回りで不祥事が起きているのではないでしょうか?これらの問題に対して、管理部門・人事部門の出来ることは何かないのか?
私にとっては、重いテーマですし、すべてに対してお答えできません。企業によってそれぞれ環境も違います。しかし会社が社会から退場を迫られるような事態にならないために、普段から考えておくこと、職場で話し合うことはできるはずです。このコラムが何かのヒントになればという思いで、取り組みます。  

昨年の4月にHBR掲載された論文*を紹介します。
モラルの崩壊をどう防ぐか、について以下のように3つの要因を示しています。

誰しも道徳的でありたいと望んでいるだろうが、たいていのリーダーは時が経つにつれて倫理観を失っていく。肩書と権限を得たことで周囲の接し方が変わる中、人間として真っ当であり続けることは、それほど容易ではない。
その要因として「全能感」「組織文化的な感覚麻痺」「見て見ぬふりの正当化」の3つがあり、これらのダイナミクスに抵抗する方法を示す。


3つの要因を次のように定義しています。

1.全能感:人は、自分には力と権力があるとあまりに強く感じると、礼儀正しい振る舞いのルールが自分には当てはまらないと思ってしまう。

2.組織文化的な感覚麻痺:周囲の人が調子を合わせていくうちに、次第に逸脱的な規範を受け入れて体現し始める。

3.見て見ぬふりの正当化:周囲の人が逸脱に対して声を挙げない。権力者と良好な関係でい続けるといった、より直接的な見返りが念頭にある。

それでは、それぞれに対抗する方法はどのようなものなのか、

●全能感

全能感は悪いことばかりではなく、時として、大胆な行動によって突破口を開いたり有意義な進歩を遂げたりするために必要とされます。
しかし、職位が高くなればなるほど率直な意見、アドバイス、注意すべきことを言ってくれる人が周りからいなくなっていくものです。ノーと言ってくれる人が誰もいないリーダーには、問題があります。

自身が「全能感の頂点」にあるかどうかを知る方法は、自身の決定が称賛、恭順、沈黙のみをもって迎えられているかどうかを見ることです。
自身でできる歯止めとしては、自分に欠陥があること、弱点があることを認めることです。そのうえに、信頼のおける同僚のグループを育み、耳の痛い事実も教えてもらうべきです。「異を唱える義務」も必ず奨励しなければなりません。

自分の提案/決定に対して無条件で全員賛成の意を示したときに、GMのアルフレッド・スローンがとった行動が良い例です。
スローンはGMの最高レベルの会議では、「それではこの決定に対しては、意見が完全に一致していると了解してよろしいか」と聞き、参加者全員が頷くときには、「それではこの問題について異なる見解を引き出し、この決定がいかなる意味をもつかについてもっと理解するための時間が必要になると思われるのでさらに検討することを提案したい」といったそうである。**
 

●組織文化的な感覚麻痺

どんなに信念を強く持つ人であろうとも、認識すべきことがあるといいます。それは、自らの道徳的指針の軸は、時とともに自分の所属する組織やチームの文化へと傾いていくということです。この麻痺はさりげないことから始まります。
「企業文化に溶け込むこと」と「自身の価値観に忠実であり続けること」との間で葛藤が生じるのです。両者の間に齟齬があると、皮肉交じりで距離を置く、幻滅による諦めといった受動的な行動をとるようになるケース。または攻撃的な言葉遣いや思ってもいない振舞を始めることもあります。

こういった傾向にどうやって気づけばいいのか?
論文では、いま起きていることについてジャーナリストや裁判官に快く話せるか自問することを勧めています。信頼のおける友人や家族を頼ることがより現実的でしょう。また、自身で行えるミラー・テストが有効です。倫理(道徳)の問題とは、朝、髭を剃るとき、あるいは口紅をぬるとき、どの様な顔を見たいかというだけの問題とも言えるのです。

伝えられるところによれば、ヨーロッパで今世紀(20世紀)はじめに最も尊敬されていた外交官は、当時の駐英ドイツ大使だった。やがては母国の外務大臣か首相と目されていた。
ところが1906年、突然辞任した。(英国)国王の戴冠5年を記念して、外交団が大晩餐会を開くことになり、ロンドン駐轄が5年に達し、外交団の代表をつとめていたそのドイツ大使は、ホスト役をつとめることになった。女好きで有名だった国王エドワード7世からは、晩餐会に趣向を凝らすようにとの意向が内々に伝えられた。デザートの後、明かりを薄暗くし、コールガールが10人ほど巨大なケーキから飛び出すようにしてもらいたいとのことだった。
この大使は、晩餐会のホスト役を逃れるために大使を辞任した。翌朝、髭を剃るとき、客引きの顔などみたくないとのことだった。
***
※(  )筆者注

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●見て見ぬふりの正当化

具体的な利益がからんでいて、発覚するリスクが低ければ、小さな違反を上手に正当化しようとする心理が働きます。
「見返りを得ること」と「正しいことをすること」との間で選択を迫られる経験をしたことはないでしょうか?
「これは例外的な状況だ」「今回は、目標達成のために多少規則を曲げる必要がある」「利益をあげることが仕事で、慈善目的じゃないんだから」問う言葉を自他に言い聞かせながら行為を正当化し始めた瞬間が、逸脱への「滑りやすい坂道」への第一歩となる、といいます。

これが積もり積もると、悪いことと知りつつ習慣化します。状況のせい、許容範囲だからといって、いつしか重大な一線を越えてしまっています。 地位が高い(権力をもつ)者は、「権力というものは、それ自体が堕落する以上に、周囲をもむしばむ」ということを肝に銘じなければなりません。

倫理的なリーダーシップとは、個人の判断によるところが大きいのです。
自身が抱える道徳上・倫理上のジレンマが、一人で抱えるべきもの、あるいは公言してはいけないものと感じるかもしれません。判断に自信が持てなくて、決断できないことを認めることを、恥ずかしいと感じることがあるかもしれません。
しかし、これは職業人生の一部分であり、他人も同じような体験をしてきているのです。率直で開かれた方法で対処すべきであるという認識をもつ必要があります。

そして、論文は以下のように締めくくっています。
全能感、組織文化的な感覚麻痺、見ぬふりの正当化の危険性を理解することは、キャリアの長い道のりの入り口に、警告の標識を立てるようなものである。道のでこぼこは避けられないが、それに対する用意をしておくほど、清廉でありつづける可能性も高まるのだ。
* 「リーダーによる倫理の逸脱を招く3つの心理」メレーテ・ウェデル=ウェデルスボルグ
Harvard Business Review, April 12, 2019
Ethics | The Psychology Behind Unethical Behavior

** P.F.ドラッカー『経営者の条件』より
*** P.F.ドラッカー『明日を支配するもの』より
 

Topics:インクルージョンとは

ダイバーシティという言葉が定着してきました。国会議員や閣僚の女性比率が世界中の各国と比べ圧倒的に低いことから、日本のダイバーシティは全く進んでいない、などと言われます。企業においても、外国人社員を採用したり女性の役員や管理職を増やしたり使用という動きは出ているようです。ただし、形だけ整えても実効性が目に見えるところまで来てはいないのではないでしょうか?皆さんの企業ではいかがでしょうか?

そんな中、今度は「インクルーション」という言葉を耳にするようになりました。
語義は、includeの名詞形のinclusionで包含(する[される]こと)、包括、包摂などという意味です(⇔exclusion)。
政治の分野では、社会的弱者や障がい者を念頭において、社会的包摂(social inclusion)/社会的排除(social exclusion)のように用いられます。教育の分野では、健常児と障がい児、つまり障がいの有無といった視点ではなく個々の生徒にあった教育を進めるという意味でインクルーシブ教育の必要性があるという考えがあります。こういった背景があり、ビジネスでも使われ出しました。

では、ダイバーシティとインクルージョンはどう違うのか?私は、厳密に定義して区別するのではなく、以下のように考えればよいと考えています。「ダイバーシティを確保したうえで、その延長上にインクルージョンを実現していく」というものです。 ダイバーシティとは人材の多様性を確保することであり、インクルージョンとは多様な人材の持っている価値観、能力を活かすことです。

人材不足と働き方改革といった(どちらかというと外圧によって)企業は多様な働き手、働き方を受け入れざるを得なくなっています。モノづくりの世界では、画一的な大量生産から少ロット多品種生産方式を実現した強さが日本にはあります。
一方で、労働環境に関しては、いまだに一括採用、画一的な集合教育、入社年次による昇級などを変更することもなく墨守しています。今いる社員で、より短時間の労働時間で今まで以上の成果をあげなくてはいけません。

そのためには、社員個々の強みを伸ばし「卓越性」を追求すること、弱みは他のメンバーでカバーし合うこと、より組織にあった効果的なコミュニケーションの方法を追求することが求められます。メンバー各自が自身の強み/弱みを知り、自己開示してチーム内で共有することです。小さな好循環を意図的に起こして、大きなうねりになるように進めてください。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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