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第21回 個と組織ドラッカーのマネジメントの視点(3)

前回(第20回)では、マネジメントの体系に登場する3つの階層を紹介しました。
①組織(企業)、②個人(働く人)、③社会です。
今回は、①組織(企業)における、「仕事のマネジメント」と「人のマネジメント」について書いていきます。

ドラッカーは、マネジメントの集大成として、また大学院(マネジメントスクール)でのテキストとして『マネジメント―課題、責任、実践』(1973)を著しました。原書で800ページ、日本語訳は、上・中・下巻のトータルで約1,000ページに及ぶ大著です。
蛇足ですが、2009年に『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海)で、ちょっとしたドラッカーブームが起きました。通称『もしドラ』は、累計販売数で350万部以上売れているそうです。この本で言う『マネジメント』は、【エッセンシャル版】として全体の3分の1に圧縮した『マネジメント 基本と原則』(2001)です。そして、最近この【エッセンシャル版】『マネジメント 基本と原則』も100万部達成したと聞きました。ツール、フレームワークや技法などについてはほとんど書かれていません。原理・原則が示されて、「あとはその時、その状況に応じて自分で考えなさい」といった内容です。ですから、いまだに内容は古くなることはなく、常に手元に置いて必要とする項目を読み返すことができる本なのです。

コラム写真01 前置きが長くなりました。本題にはいります。

『マネジメント(中)』第31章 マネジメントの仕事(エッセンシャル版では、第5章 22.マネジャーの仕事)が今回の該当部分です。

冒頭でこう言います。「マネジメントの人間たるためには、肩書や個室などの地位を表すシンボル以上のものが必要である。卓越した能力と仕事ぶりが要求される」

そのうえで、マネジメントの仕事には基本的なものが5つあるとします。
「マネージャーに共通する5つの仕事」
①目標を設定すること
②組織すること
③チームを作ること 
④評価をすること
⑤自らを含めて人材を育成すること

個別に見ていきます。
①目標を設定すること
目標を持つべき領域を定め、そのそれぞれについて到達地点を決める。そのために行うべきことを決める。連携する人たちとのコミュニケーションによって、それらの目標を意味あるものにする。
ここで注意すべきことは、「領域を定める」すなわち自らのチームが責任をもつ範囲を明確にすることです。そのうえで、「連携する人たち」すなわち他のチームとそれぞれの目標を照らし合わせて、部分最適になっていないか(全体最適になっているか)、MECE(お互いに漏れなく、ダブリなく)になっているかを確認しあうことです。
「自らのチームの目標を作って、さあ実行」ではなく、他のチームとのコミュニケーションをとることの重要性を言っています。

②組織すること
活動、決定、関係を分析し、仕事を分類する。分類した仕事を活動に分割し、作業に分割する。それらの活動と作業を組織構造にまとめる。それらの活動とそれぞれの部門のマネジメントを行うべき者を選ぶ。
ここでは、仕事をきちんと設計しなさいと言っています。プロセス、手順を明確にした上で、組織を組む、あるいは組織にあてはめなさいということです。それから、人を配置するという順番です。
こんな人がいるからこの仕事もやってみよう、という人からの発想ではなく、仕事の設計があって、組織構造を作って、人を配置するのです。

③チームをつくること
動機づけを行い、コミュニケーションを図る。組織においてこれを行う。人の関係においてこれを行う。昇給、配置、昇進などの人事においてこれを行う。部下、上司、同僚とのコミュニケーションによってこれを行う。
動機づけとコミュニケーションを行うには、対人能力が必要です。分析力よりも統合する能力が求められます。人事においては公正さが必要です。ドラッカーのいうところの真摯さが重要になります。

④評価をすること
評価のための尺度を定める。評価測定の尺度ほど、組織全体と一人ひとりの成果にとって重要な要因はない。部下の全員が組織全体の成果と自らの成果について評価の尺度を持つようにする。彼らの成果を分析し、評価する。尺度の意味と成果を部下と上司、同僚に知らせる。
ここでは、一人ひとりが達成すべき成果を明確にしたうえで、実際の成果を何によって評価するのかをあらかじめ明確にしておくことが求められています。そうすることによって、上からの管理ではなく、自己管理を可能にします。「目標管理」(MBO)を導入している会社は多いでしょう。ドラッカーが提起したものは「自己目標管理」(Management by Objectives and Self-control)です。この「自己」(Self-control)が大切なのです。ある工場の現場にスローガンが大きく書かれていました。「やれでやるのではない、やるでやる!」まさに仕事(=成果)にコミットメントする姿勢を表しています。

⑤自らを含めて人材を育成すること
人と働くことは人の成長にかかわりを持つということである。部下を正しい方向に導き、より大きく、より豊かな人間にすることが、直接的に、自らがより豊かな人間になるかより貧しい人間になるか、成長するか退化するかを決める。

経営の資源は、「ヒト、モノ、カネ、(情報)」と言われます。現代では、モノ、カネ、情報も以前に比べると調達は容易で、差別化要因には成り得なくなりました。残ったのが「ヒト」です。ドラッカーは「マネジメントの資源は人である」というタイトルで実例を紹介しています。少々長くなりますが引用して、締めくくりとします。

最近は、愛想をよくすること、人を助けること、人づきあいをよくすることが、マネジメントの資質として重視されている。だがそのようなことで十分なはずはない。
事実、うまくいっている組織には、必ず一人は、手を取って助けもせず、人づきあいも良くない者がいる。この種の者は、気難しいくせにしばしば人を助ける。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。自ら知的な能力を持ちながら、真摯さよりも知的な能力を評価したりしない。
逆に、このような資質を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきあいがよかろうと、また、いかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネジメントとしても紳士としても失格である。


次回は、個人(働く人)のセルフマネジメントについて紹介します。

注)ドラッカーの『マネジメント』 ’Management:Tasks,Responsibilities,Practices’ には現在、入手可能なもの が2種類あります。
◎ダイヤモンド社刊 上田惇生訳『マネジメント 課題、責任、実践』上/中/下
◎日経BP社刊 有賀裕子訳『マネジメント 勤め、責任、実践』ⅠⅡⅢⅣ
日経BP社(有賀)版は、原著1973年初版の「無修正版」からの新訳で4分冊、総ページ数は1,800ページになっています。
このコラムでは、特に断りのない限り、ダイヤモンド社から刊行されているドラッカー名著集(エターナル版)上田惇生訳から引用しています。

次回「第22回 個と組織ドラッカーのマネジメントの視点(4)」は9月25日掲載の予定です。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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