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第22回 個と組織ドラッカーのマネジメントの視点(4)

前々回(第20回)では、マネジメントの体系に登場する3つの階層を紹介しました。
①組織(企業)、②個人(働く人)、③社会です。
今回は、②個人(働く人)における、「セルフマネジメント」について書いていきます。

ドラッカーの著書で、最も読まれているものが『経営者の条件』(The Effective Executive)(1966) です。書名に「経営者」と入っていますが、大企業の経営陣や中小企業の社長のためだけの本ではありません。原題の’Effective Executive’ を直訳すれば、「出来る人」という意味です。
ですから、ドラッカーの著書に初めて挑戦するのなら、この『経営者の条件』からがオススメです。
また、昨年の12月に『人生を変えるドラッカー』吉田麻子著(ダイヤモンド社)が出版されました。『経営者の条件』をテキストにした読書会を舞台にした小説で、学生や若いビジネスマンたちがそれぞれの役割の中で成果をあげていく成長過程を描いたものです。ここを切り口にドラッカーに入門するのもいいでしょう。

『経営者の条件』のまえがきは、このように始まっています。
「普通のマネジメントの本は、人をマネジメントする方法について書いている。しかし本書は、成果をあげるために自らをマネジメントする方法について書いた。ほかの人間をマネジメントできるなどということは証明されていない。しかし、自らをマネジメントすることは常に可能である」

「そもそも自らをマネジメントできない者が、部下や同僚をマネジメントできるはずがない。マネジメントとは、模範になることによって行うものである。自らの仕事で業績をあげられない者は、悪しき手本となるだけである」

「成果をあげるために特別の才能や、適性や、訓練が必要なわけではない。物事をなすべき者が成果をあげるには、いくつかの簡単なことを行うだけでよい。成果をあげるには、本書で述べているいくつかのことを実行すればよい。しかもそれらを実行するために生まれつき必要なものは何もない」

「成果をあげることは修得できる。そして修得しなければならない」
 
コラム写真01
それでは、「セルフマネジメント」成果をあげるために身につけておくべき習慣的な能力*5つを見ていきましょう。

*成果をあげることは一つの習慣である。実践的な能力の集積である。実践的な能力は修得できる。それは単純である。しかし身につけるには努力を要する。

①何に自分の時間がとられているかを知ることである。残されたわずかな時間を体系的に管理することである。

②外の世界に対する貢献に焦点を合わせることである。仕事ではなく成果に精力を向けることである。「期待されている成果は何か」からスタートすることである。

③強みを基盤とすることである。自らの強み、上司、同僚、部下の強みの上に築くことである。それぞれの状況下における強みを中心に据えなければならない。弱みを基盤にしてはならない。
すなわちできないことからスタートしてはならない。

④優れた仕事が際立った成果をあげる領域に力を集中することである。優先順位を決めてそれを守るように自らを強制することである。最初に行うべきことを行うことである。二番手に回したことはまったくおこなってはならない。さもなければ何事もなすことはできない。

⑤成果をあげるよう意思決定を行うことである。決定とは、つまるところ手順の問題である。そして、成果をあげる決定は、合意ではなく異なる見解に基づいて行わなければならない。もちろん数多くの決定を手早く行うことは間違いである。
必要なものは、ごくわずかの基本的な意思決定である。あれこれの戦術ではなく一つの正しい戦略である。

それぞれについて、解説をしていきます。
 

①時間管理 (Know Thy Time)

時間とは普遍的な制約条件です。常に不足しています。
まず、時間が何に使われているかを記録します。頭で想像するのではありません。事細かに記録します。
すなわち時間の分析であり、時間を浪費する要因を除去します。やっている業務を見て、止めてみたらどうなるか(廃棄)、他人に任せられないか(委譲)を考えます。そしてまとまった時間の塊を作り出して課題に集中することです。
 

②貢献に焦点を合わせる (What Can I Contribute?)

①が作業的・機械的・効率の問題であったのに対して、②は概念的・分析的・成果への関心の段階です。
ここでは、自らの組織が成果をあげるために、自らがそこにいる理由(すなわち組織への貢献)について徹底的に考える必要があります。
その答えは、自らに対する高度の要求、自らと組織の目的の方向性の一致を必要とします。責任ある行動を要求します。
 

③強みを生かす (Making Strength Productive)

強みを生かすということは行動することです。実行によって修得すべきことであり、実践において自己開発すべきものです。
同僚、部下、上司について「出来ないことは何か」ではなく組織のために「できることは何か」を考えるようにすれば、強みを探し、それを使うという姿勢を身につけることができます。やがて自らにも同じ姿勢を身につけることができます。そして、個人の目的と組織のニーズを結びつけ、個人の能力と組織の業績を結びつけ、個人の自己実現と組織の機会を結びつけるのです。
有名なフレーズ’Build on your strength!’です。
 

④最も重要なことに集中せよ (First Things First)

ここで言っている集中とは、短期の集中力(concentration)ではなく、長期的に焦点をあてる(focus)ということです。
成果をあげる人は、最も重要なことからはじめ、しかも一度に一つのことしかしない。マルチタスクなどということは作業レベルで可能なだけです。①で作ったまとまった時間を③の強みをもって重要な機会に集中することが必要なのです。
ドラッカーは、集中のための原則を教えてくれます。「廃棄」「劣後順位」です。
生産的でなくなった過去のものを廃棄することです。その判定方法は「まだ行っていなかったとして、今これに手をつけるか?」と問うことです。

また、状況からの圧力というものは、未来より過去を、機会より危機を、外部より内部を、重大なものより切迫したものを優先します。
しかし、その圧力に屈した時には重要な仕事が犠牲にされます。本当に行うべきことは優先順位の決定ではなく劣後順位の決定、すなわち取り組むべきでない仕事の決定とその決定の遵守だと言います。
 

⑤成果をあげる意思決定(The Elements of Decision-making/Effective Decision)

ドラッカーは、「成果をあげるには意思決定の数を多くしてはならない。重要な意思決定に集中しなければならない」と言います。
デスクの上の「未決」トレーの書類を次々に「既決」トレーに移し替えて、今日は〇〇件の意思決定を行なった、では全く意味がないのです。
仕事の設計をきちんとすれば意思決定しなくてもよいものがあるはずです。意思決定が必要な者にも、「基本を理解して決定すべきもの」と「個々の事情に基づいて決定すべきもの」があります。さらに、決定したならば実施に移すこと、すなわち実務レベルに下ろさなければなりません。

また、決定においては満場一致で決めることの危うさについても述べています。相反する意見の衝突、異なる視点との対話、異なる判断の間の選択があって初めて良い意思決定ができると言います。

最後に、重大な意思決定を行う立場にある人が心にとめておかなければならないこととして、以下のドラッカーの警鐘を紹介します。

「ばかな人もいれば無用の対立をあおるだけの人もいることは確かである。だが明白でわかり切ったことに反対する人は、ばかか悪者に違いないと思ってはならない。反証がない限り、反対する人も知的で公正であると仮定しなければならない。
したがって、明らかに間違った結論に達している人は、自分とは違う現実を見、違う問題に気がついているに違いないと考えるべきである。もしその意見が知的で合理的であるとするならば、彼はどのような現実を見ているのか考えなければならない」


まとめとして、現代社会には二つのニーズがあります。
1.個人からの貢献を得るという組織のニーズ
2.自らの目的の達成のための道具として組織を使うという個人のニーズ

この二つのニーズを調和させるために、私たちは「成果をあげる能力」を修得しなければならないのです。

(参考:優先順位)ドラッカーは、優先順位については4つの原則をあげています。
「優先順位の決定には、いくつかの重要な原則がある。すべて分析ではなく勇気に関わるものである。第一に、過去ではなく未来を選ぶ。第二に、問題ではなく機会に焦点を合わせる。第三に、横並びではなく独自性を持つ。第四に、無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選ぶ」

次回は、③社会とのかかわりについて、「事業のマネジメント」についてです。

次回「第23回 個と組織ドラッカーのマネジメントの視点(5)」は9月28日掲載の予定です。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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