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第24回 「働き方改革」はじめに

今回より、少々長い連載になりますが、「働き方改革」について書いていきます。

政府が策定した「働き方改革実行計画」(2017.03) と9つの分野に係る実行計画(ロードマップ)についても触れていきます。
しかし、目的はこれらの方針の解説ではなく、あくまで仕事の現場での実践を促す内容にしていきます。対症療法のみでなく地道な改善の積み重ねが大切であり、いずれは大きな成果を生むとの確信に基づき提言をしてきます。

上記実行計画に先立ち、2015年の通常国会に改正労働基準法案が提出されました。現状、今年秋の臨時国会に持ち越しとなっていますが、臨時国会での審議がなされるかどうかは不明(冒頭解散?)なため、さらに先延ばしになる可能性があります。

この改正のポイントは、
1.働き過ぎ防止のための法整備 
2.フレックスタイム制の見直し 
3.裁量労働制の見直し 
4.特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル労働制の創設)
があげられています。

この中で、企業の経営陣・人事労務担当者や組織(=企業)、企業で働く個々人が関心を持っているものが「長時間労働」の問題です。

「働き方改革」と聞いてわたしはこう思いました。「働かせ方改革」ではないのだなと。そして、この改革の最大のポイントは、いわゆるホワイトカラーの生産性向上なくしては何も達成できないなと。
つまり、「これまで以上に頑張る!」では、到底無理。すでに限界近くまで伸び切っているゴムをさらに引っ張ると切れてしまうように、上からの号令で「今まで以上の結果を、今まで以下の時間でやりなさい」では破綻してしまうと思いました。

ですから、組織において働く人一人ひとりが自らの仕事とそのやり方を見直すことが必要です。それと同時に、組織全体として仕事の洗い出し、仕事の設計の見直し(廃棄、省力化、機械化など)をして生産性を高めることが必要です。

具体的な改革への取り組みに入る前に、今の時点で知っておかなければならないこと、緊急に対策しなければならないことを何回かに分けてお伝えします。
 
コラム写真01
本原稿を書いている時点(2017.9.23)で大きな事件となった電通の違法残業事件について触れておきます。
ベテランの人事労務担当者であれば、四半世紀前の電通事件を覚えておられるでしょう。1991年に若手男性社員(入社2年目)が長時間労働、パワハラを受けるなどした後、うつ病となり自殺に至ってしまったという痛ましい事件です。裁判においては、最高裁まで争われて、この時の判決が、後々の長時間労働における争議の重要な判例となっています。その内容は、会社側の過重労働による健康被害に対する使用者の安全配慮義務を明確に定めたことにあります。

今回の事件でも、電通は2回の是正勧告に対して36協定を順守すると回答したものの、現実的には守られませんでした。会社側の労働時間規制に対する認識の甘さ、クライアントファースト(顧客第一)、会社の利益優先などにより、労働者の心身の健康を顧みない姿勢が引き起こしたものでした。
不幸にして自殺した一人の問題ではなく、違法な長時間労働が常態化した中で起こったものである、との検察側の論告があったのです。
同種の事件では、正式な裁判を開かず、書面の審査のみで刑を科す略式手続きが取られてきましたが、今回は「略式命令不相当」として正式裁判となりました。
電通は、起訴内容についてすべて争わない姿勢を示しています。クライアントの要望についても、応じきれないものは断る姿勢、10時以降の全館消灯などの対策は取っているといいます。しかし、下請け会社へのしわ寄せなどがあるとの指摘がなされています。

このコラムの読者の企業においては、電通をはじめ、近年書類送検にいたった、小売(靴の販売)、飲食サービス業などでの常態化した過重労働はないものと思いますが、実際の残業を社員が正しく申告していなケース(サービス残業)、残業時間の上限以上の申告を暗に規制しているケースなどがひそんでいる可能性があります。  

次回は、そもそもタイムカードとは、についてです。労働基準監督署の調査があった時には、タイムカード、賃金台帳はまず一番にチェックされるところです。

【ドラッカーならば、何というだろう】
「会社が勧めるから」という理由で「働き方改革」をするのではありません。
ドラッカーは、組織の前に、まず「自分自身」という資源の活かし方に、自分自身が責任を持つことを強く求めました。「まず自分自身をマネジメントできなければ、他者をマネジメントすることはできない」と言い、「セルフマネジメント」の重要性を訴えました。

「知識労働者は、自らをマネジメントしなければならない。自らの仕事を業績や貢献に結びつけるべく、すなわち成果をあげるべく自らをマネジメントしなければならない。」
『経営者の条件』 P.21

次回 第25回「『働き方改革』労働時間の把握~そもそもタイムカードとは~」は10月19日掲載予定です。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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