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36.採用力について考える(1)

2019年卒の学生のエントリーがスタートしています。そして6月以降選考(試験・面接)が解禁になります。
今年の採用活動も昨年に引き続き「売り手市場」と言われています。求人数の増加と卒業する学生数との関係から、マクロでみれば「売り手市場」なのでしょうが、ミクロで見ると一概には言えません。
学生側からは、
1)安定志向から公務員人気
2)少子化(兄弟姉妹が少ない)により親と同居して働きたいという地元志向
3)給料は高くなくてもいい、残業がなく楽な仕事がいい(メガバンク人気の翳りなど)。
があります。

企業側からは、
1)ITエンジニア採用が困難
2)技術の進歩に遅れないためには社内の人材では間に合わず、理系の学生を採用したいがうまくいかない。
といった声が聞かれます。  

企業は採用計画を立てて、それに基づき人事部門(採用担当)は学生や学校と接触して計画達成を目指します。この「採用活動の成果」とは何か?を考えると、短期的には計画人数に対して何人採用できたかです。
しかし、長期的には採用した社員が企業に定着して業務を遂行し結果を出せているか、ということになるでしょう。この結果が出るまでには5年、10年経たなければ評価できないのです。ここがまさに「人材」という特殊な資産を獲得する、さらには育てる難しさがあります。
人事部門のもっとも大変な仕事であり、また企業の存続・発展に関わる重要な仕事なのです。

今回は3つのヒントを挙げます。御社の採用計画、採用までのプロセスにおいて参考になるか検討して、アレンジして活用してください。
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1)毎年、できうる限り同じ人数を採用すること
企業業績が好調で、採用活動に対して潤沢な予算が出ている時、採用市場が「買い手市場」になり応募者数が増えるなどの時には大量の採用を行い、そうでないときには採用ゼロが続くようであれば、遅からず企業内の人員構成にゆがみが出てきます。大手メガバンクでもこういった現象が見られます。
苦しくとも、あるいは本当はもっと採用できたとしても我慢して一定数をコンスタントに採用する努力は必要です。この考え方を社内で(トップマネジメントも)共有することが必要です。

◎実際、私が採用業務をしていた時には、学生に対しての企業説明においても、この一定数採用のポリシーを説明していました。「入社してもすぐ上の先輩が5歳年上、後輩が何年も入ってこないなんてことはありません。1年、2年年上の年齢の近い先輩社員がいます。そして1年後には後輩が入ってきて皆さんには先輩社員として後輩の面倒を見てもらうことになります」と言っていました。
ここは学生さんにとって、とても響くポイントでした。

2)大学受験への取り組み、学部・学科選択の理由を聞く(卒業予定大学のみで判断しない)
日経ビジネス3月19日号では、特集「大事なのは高校」が掲載されています。
ポイントは、大学の画一化と高校の多様化が同時進行で進む中、優れた人材を輩出する高校を把握しておくことが、有能な人材を採用できる鍵となる、というものです。
当然、全国誌ですから、首都圏の大手企業を対象にかかれている感はありますが、静岡県の実情を加味して読んでも十分得るものはあります。

近年、高校進学はほとんど無競争で入学できるため、学生にとっての最初の試練は大学入試の時にやってきます。どのような基準で志望大学・学部を選択したのか?そして入試に向けていかなる戦略で目標を達成したか/できなかったか?を聞き出すことで、その学生の思考パターンや行動特性が見えてきます。
また、地元や首都圏の大学ではなく、地方の特色ある学校に挑戦して静岡県にUターンしてくる学生にも注目できます。(会津大学、はこだて未来大学、立命館アジア太平洋大学(APU)、国際教養大学(AIU) など)
理系で、高専から大学編入した学生が多くいる大学もポイントです。北陸先端(科学技術大学院大学)、奈良先端(科学技術大学院大学)、豊橋技工科大学などあります。

◎実際、私が採用業務をしていた時には、「大学入試の時点でなぜ今の大学、学部を選んだのか?」を必ず聞いていました。また、履歴書に書かれている出身高校名もチェックしていました。
当然ですが大学の成績証明書(履修履歴)も見て気になる点は質問していました。
学生の間で(あるいは就活メディアの影響で?)近年、企業は成績重視の傾向が強いと言っているようですが、今に始まったことではなく、学業の分野で何にどのように取り組んできたのか、どのような成果をあげられたのかを問うのはいつの時代も同じです。
そこが抜け落ちて、クラブ活動、アルバイト経験のみが面接の中心話題になるのは避けなければなりません。

3)どのような人材が採りたいのかを計画段階から明確にすること
実情は、応募者の中から自社の社風に合いそうな学生を選抜しているのかもしれません。応募していただけるだけでありがたい、ということも事実です。
しかし、今後、さらに質の高い採用活動を目指していくためには、計画段階からどのような資質を持った学生をターゲットにするのか、人事部門だけでなく全社で共有することです。
例えば、
1)起業家精神を持ち独立心があり、新規事業にチャレンジするマインドがありそうな人物 
2)バランス感覚があり、基本的な業務をマネジメントし組織作りに貢献できそうな人物 
3)リーダーシップやコミュニケーションに難がありそうだが、飛びぬけてものすごいものを作りそうな人物 
4)フットワークよく、人当たりもよく対外的な活動を得意として利益貢献が出来そうな人物
など具体的な人物像(最近の言葉で言うとアバターですね)を念頭に採用活動を進めることです。

これを何年も繰り返していくことで徐々に採用活動のレベルが上がります。採用実績から応募学生の質も上がってくるのです。その年の採用活動が終了した時点で、当初目標と結果の評価(フィードバック分析)を行ってください。ただ「できなかった」ではなく、目標と結果のギャップからいくつかの打ち手が出てきます。それを翌年に実行してください。
目に見える成果は少なくても、続けることが重要です。

Topics : アンラーニング (unlearning)

「アンラーニング」とは、いったん学んだ知識や既存の価値観を批判的思考によって意識的に棄て去り、新たに学び直すこと。日本語では「学習棄却」「学びほぐし」などと訳されます。
個人や組織が激しい環境変化に適応して、継続的な成長を遂げるためには、いわゆる学習(ラーニング)と学習棄却(アンラーニング)という、2種類の一見相反する学びのプロセスのサイクルをたえず回していくことが不可欠とされます。(「日本の人事部」HPより引用)
 
仕事の現場では、新入社員に対しての教育や昇格時の研修などがプログラム化されて実施している企業が多いようです。しかし一方で、働く人個人やチームが意識して新しい技術、技能を取り入れるための学びの姿勢が弱いと感じます。ある年齢に達すると今までに獲得した知識で逃げ切ろうとする社員が増えてきます。
今後、定年が延長され、あるいは定年といった概念がなくなりより長く働く時代になります。逃げ切ろうにも逃げ切れなくなる本人にとってもつらいことですし、それを見ている若手の社員のモチベ―ションも下がってしまいます。
個人やチームに新しいチャレンジを求めるならば、単に目標を与えてチャレンジを促すだけでは十分ではありません。当事者に任せるだけでなく、組織として、すでに獲得している技術、技能、知識のなかで陳腐化しているものを洗い出し、廃棄する/させることを徹底しなければなりません。
組織を発展させていくためには、古いものを廃棄し、新しいものに取り組んでいくこと、まさにイノベーションが欠かせません。

ドラッカーは、『イノベーションと企業家精神』(1985)で以下のようにいっています。
イノベーションこそ、組織を発展させるための最高の手段であり、一人ひとりの成功にとって最も確実な基盤であることを周知させる必要がある。そのうえでイノベーションの必要を明らかにする必要がある。さらには、具体的な目標のもとに計画を立てる必要がある。

イノベーションを魅力的なものにするための第一の段階は、すでに活力を失ったもの、陳腐化したもの、生産的でなくなったものの廃棄を制度化することである。スタッフ活動についてはもちろんのこと、一つひとつの製品、工場、技術、市場、流通チャンネルの継続の可否について三年ごとに判定しなければならない。(p175-176)


また、新しいところでは、ビジャイ・ゴビンダラジャン(ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネス教授)、クリス・トリンブル(同非常勤準教授)『戦略的イノベーション-新事業成功への条件』(2006年7月、ランダムハウス講談社)で紹介された「忘却・借用・学習」モデルが参考になります。
大胆に簡略化すると、今までの成功パターンを捨てること(忘却)、そのうえで最先端の事例を研究して自らのビジネス(or 学習)モデルに取り込んで(借用)、新たなパターンを作りあげていく(学習)するというものです。
いずれにせよ、何か新しいことをするためには、まず何かを捨てなければならないのです。
大庭純一

Jerry O. (大庭 純一)
1956年 北海道室蘭市生まれ、小樽商科大学卒業。静岡県掛川市在住。
ドラッカー学会会員。フリーランスで、P.F.ドラッカーの著作による読書会、勉強会を主催。
会社員として、国内大手製造業、外資系製造業、IT(ソフトウェア開発)業に勤務。
職種は、一貫して人事、総務、経理などの管理部門に携わる。社内全体を見通す視点、実働部隊を支える視点で、組織が成果をあげるための貢献を考えて行動をした。
・ISO9000s(品質)ISO14000s(環境)ISO27000s(情報セキュリティー)に関しては、構築、導入、運用、内部監査を担当。
・採用は新卒、キャリア、海外でのエンジニアのリクルートを担当。面接を重視する採用と入社後のフォローアップで、早期離職者を出さない職場環境を実現。
・グローバル化・ダイバーシティに関しては、海外エンジニアの現地からの直接採用、日本語教育をおこなう。日本人社員に対しては、英語教育を行う。
・社内教育では、語学教育のみならず社内コミュニケーションの活性化、ドラッカーを中心としたセルフマネジメント、組織マネジメント、事業マネジメントを指導。

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